「男女それぞれの採用人数を決めておかないと、内定者が女子ばかりになってしまう」
ここ数年、新卒採用の現場でよく言われることだ。「男子より女子のほうが優秀」はもはや常識。男女別に枠を設けて男子学生に下駄をはかせる企業が少なくない。
しかし、最近になって「女子は優秀」神話が揺らいできているという。ハナマルキャリア総合研究所の上田晶美代表は指摘する。
「女子学生が優秀なのは確か。とはいえ、新卒採用の仕組み上、実力以上に女性が評価されやすい側面もあるのです」
新卒採用では、人事担当者は短時間の面接でポテンシャルを評価するしかない。大企業になればなるほど、日頃は採用と全く関係のない業務をしている現場の社員が面接官として駆り出されることも多く、評価はどうしても、コミュニケーション能力に引っ張られてしまう。
「コミュ力は男子に比べて女子が圧倒的に高いので、女子ばかりが過剰に優秀に見えてしまうのです」(上田さん)
キャリアコンサルタントで、バー「とこなつ家」店主の鈴木康弘さんも言う。
「コミュ力が高い女性は、最初の数年はすごく評価されます。でも、4、5年経つと成長してきた男性に追い抜かれてしまうことがある。会社でなかなか叱ってもらえないことも、評価が逆転する理由の一つです」
安倍政権がどんなに「女性の活用」を訴えても、多くの企業はまだまだ男性中心。男性上司はいまも若い女性部下の扱い方がわからず、男性部下のようには叱れないという人が大半だという。「セクハラ」視されるのを怖がって、女性部下と距離をとってしまう男性上司も少なくない。
前出の上田さんによると、面接段階と入社後で図らずも「言うことが違う」という事態に陥ることが少なくないという現実も、女子に不利に働いているという。
「面接の段階では、『転勤できます!』とアピールしても、実際に入社すると『やっぱり転勤はできない』『土日は休みでないと困る』などと言う人は、残念ながら女性に多い」
ただ、上田さんはこうも言う。
「単なる気まぐれとして責められません。女性には結婚、出産などのライフイベントがあり、どうしても身動きしにくい時期があるからです」
※AERA 2014年10月27日号より抜粋