首都圏を中心に新築マンションの大量供給が続く。安全なマンション選びは、どうすればいいのか。ポイントを探った。

 マンションの購入に際して、多くの人が気にする「上下階の遮音性」。これは購入前に確認しておいたほうがいいが、注意が必要だ。

「生活する上で、子どもが走り回る音などの『騒音』は大きなリスク。エントランスやエレベーターのモーター音などは設計や施工の工夫でリスク軽減されている場合もありますが、足音などに対する防音・遮音技術は発展途上で、完全に音を遮断する技術はまだ開発されていません。『子どもがいますが、階下に迷惑をかけないでしょうか』という問いに、営業担当者が、『このマンションでそんなことはないですよ』と根拠なく答える場合があります」(1級建築士の辻優子氏)

 分譲マンションは、過去の施工経験によって品質に影響が出る。住宅建築と住宅以外の工事、それに賃貸と分譲でも性質が異なり、分譲マンションならではの求められる品質がある。

 賃貸マンションはワンオーナーが相手だが、分譲マンションは戸数分のオーナーを相手にするため、クレームの数や種類が大きく異なる。

 ディベロッパーの中には、過去のクレームに基づいて設計基準を細かく設定し、設計段階から引き渡し段階まで厳しくチェックをして、段階ごとに情報開示する企業もある。

 施工実績も判断材料のひとつ。五輪特需による大型のインフラ整備が予定されている。建設業界では「利益率の高くない分譲マンションをわざわざ取りに行かなくてもいいだろう」という話も聞かれる。

 中堅ディベロッパーの関係者は、「今までディベロッパーの仕事を受けていたゼネコンが、一気に住宅以外の工事にも向かっているようです。ディベロッパーはゼネコンを確保しなければいけないのですが、今は受注を受けきれず断るゼネコンも増えていると聞いています」

 そうした状況で、大規模マンションの施工実績のあまりないゼネコンが、大きな分譲マンションを初めて受注するようなケースが増えているという。

 高額な買い物だけに、業界事情を頭に入れつつ、専門家の意見も判断材料にすることが、失敗を防ぐ第一歩だ。

AERA 2014年4月21日号より抜粋