発酵中の麹の香りをかぐたび、「不思議な仕事」と感じるという味噌蔵元の五味さん。微生物の営みを利用した発酵食品は、和食の要(撮影/小林キユウ)
発酵中の麹の香りをかぐたび、「不思議な仕事」と感じるという味噌蔵元の五味さん。微生物の営みを利用した発酵食品は、和食の要(撮影/小林キユウ)
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 大豆から味噌を手作りする教室が人気だ。手作業から伝わってくる食の醍醐味に若い世代が共感している。

 煮えた大豆の良い香りが漂う中で、プラスチック製の「舟」を囲んで作業中の男性7人、女性5人。ここは山梨県身延町にある農協の農産物加工所。甲府市で天然醸造の味噌蔵を営む五味醤油の6代目跡継ぎ、五味仁さん(33)が講師を務める味噌作り教室の真っ最中だ。

 受講生は、主に首都圏在住の23歳から40歳の会社員たち。身延町で農業生産法人を経営する遠藤好一(よしかず)さん(63)から畑を借り、週末農業を楽しむサークル「農民人(のうみんちゅ)」のメンバーだ。3年前から、自分たちで育てた在来作物の曙大豆で味噌を仕込む。

「味噌作りは、消費しきれないほど大豆が収穫できて始めました。手をかけると思いも深くなる。おいしいものを大事にする文化を醸成しています」

 と語る代表の岡田大地さん(32)は横浜市在住の会社員だ。今年は運悪く、育てた大豆が鹿に食べられてしまい、遠藤さんから貰い受けた。20キログラムの大豆を、麹20キログラム、塩10キログラムと混ぜ、70~75キログラムの味噌ができる。

「童心に帰る。粘土遊びみたい」「むにゅむにゅして気持ちいい」と夢中になるメンバー。

 今、味噌作り教室は、ちょっとしたブームになっている。増えてきたのは「3年ほど前から」と分析するのは、日本発酵文化協会の発起人で日本料理の研究家でもある是友(これとも)麻希さんだ。

「塩麹ブームで、麹という言葉に火がつき、麹を使って作る味噌や醤油に関心が向いた。若い人にも人気が広がっているのが今の特徴です」

 背景を聞くと、「目に見えない生物を飼うペット感覚の楽しみ」が、手作り人気や健康志向と相まって広まったのではないかという。また、発酵食品を使えば味に深みが出る、と見直されたことも一因のようだ。

AERA 2014年3月31日号より抜粋