今や生活の一部となっているツイッター、フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)。しかし身近になるとともに、「炎上」などのトラブルも増えている。
ライターの入山栄子さん(36、仮名)は2年前、ある自治体が主催する地域振興のための「ご当地アイドル」に選ばれ、約半年間、離島に移り住んだ。ブログやツイッターで、島での生活ぶりを書き込むことが任務だったが、ある時から、〈なんでお前が選ばれたんだ〉〈税金を使って遊んでいる〉といった悪口が寄せられるようになった。慣れない島暮らしのストレスも重なり、ある時、〈自分でやってみなさいよ!〉と反論ツイートをしてしまったところ、あっという間にタイムラインに、〈それを言ったらおしまいだろ〉〈ブス〉など、誹謗中傷が殺到したという。
「その後は何を言われても無視するようにしましたが、顔の見えない相手からの悪意に傷つきました」(入山さん)
多摩大学情報社会学研究所の田代光輝客員研究員は、「炎上」にはある法則が存在すると指摘する。
「アメリカの心理学者オールポートとポストマンが提唱する『デマの法則』によれば、『デマの流布量』は『関心の高さ』×『情報のあいまいさ』に比例すると言われています。炎上とはまさにデマの流布量が一気に高まった状態といえるでしょう」
「関心の高さ」は、入山さんのように、投稿者が著名人や芸能人など羨望の対象となる場合に高まることが多いが、ふつうの人であっても、その時に注目を集めている話題であれば、例外ではないという。「情報のあいまいさ」とは政治や宗教、スポーツなど、いわゆる「正解」のない問題や話題が当てはまる。さらに、
「大学生や大手企業に所属している人、または出身者。安定していると思われている公務員や教師なども、実はうらやましいと思われているのです」(田代さん)
自覚はないかもしれないが、多くの人が誰かにとっては「セレブ」だというのだ。
※AERA 2013年8月26日号