早稲田大の卒業生の気質として語られてきたのが「群れない」こと。同窓会を開いても集まりが悪いとされ、永遠のライバル、慶應義塾大の「慶應三田会」と対比されてきた。そんな状況が変わりつつある。
「いま卒業生たちが校友会活動に積極的に動いてくれています」
こう話すのは早稲田大の三木省吾校友会事務局長だ。
64万人いる校友会会員(卒業生)の受け皿になっているのが校友会支部や稲門会(とうもんかい)だ。卒業年次ごとの年次稲門会や、企業・業種別の職域稲門会、地域稲門会など1380団体に上る。数の上では、慶應大の卒業生数38万人、同窓会団体数870を超えている。
「婚活パーティーや経済的に厳しい子供向けに無料の塾を開いたり、地域貢献に取り組んだりするなど活動は多様です。自ら汗を流すのが早稲田卒業生の特徴。稲門会の活動を楽しみながら、社会貢献している人も多いです」(三木事務局長)
大学同窓会で最強とされてきた三田会とは比較されがちだ。稲門会の関係者は三田会から学ぶものが多いというが、近年では三田会側が稲門会側から学んだ取り組みもある。
早稲田大学グリークラブ(通称:ワセグリ)は、1907年創設の伝統的な男声合唱団だ。会員は1500人いて、“歌い足りない”OBらも集まる。OB会幹事長の佐々木豊さん(84年卒)は、「活動は大変だが充実感がある。自分を元気づけることにもつながっています」という。
ワセグリのOB会が力を入れているのが現役生の支援。合唱人口が減って部員が伸び悩んでいるため、新入生を勧誘する時期などに“軍資金”として70万を援助している。
「現役部員が新入生に気前よくおごれるように、という狙いがある。この話を慶應の合唱団OBにしたら、『負けてはいられない』と言って現役支援活動を始めたようです」(佐々木さん)
2019年9月にはワセグリの48人の学生が、中国・上海で現地の合唱団との交流演奏会を行った。その時の旅費をOB会などで募ったところ、250万円の目標に対し400万円を超えた。OBで早大元総長の白井克彦さんも寄付したという。
「OB会費というとなかなか払ってもらえないが、現役生を支援するためなら出してもいいという人は多い。今後は学生の声も聞きながら、さらに支援を強めていく予定です」(同)