どんなサウンドが出てくるのか、予想しきれない顔ぶれ
New York Days / Enrico Rava
アルバム名が示す通り、エンリコ・ラヴァの新しいニューヨーク・プロジェクト。ニューヨーカーと共演したNY録音である。イタリアンのラヴァは1967年から約10年間、アメリカを拠点に多くのフリー・ジャズ系ミュージシャンと交流を図った経歴があって、この時代が現在に至る活動の土台となっていることは疑いない。
興味深いメンバーだ。一見するとどんなサウンドが出てくるのか、予想しきれない顔ぶれ。レギュラー・クインテットやデュオ・パートナーとしてラヴァの信頼が厚いステファノ・ボラーニ、2004年NY録音作『タチ』にも参加したポール・モチアンとは、すでにレコーディングでの実績がある。クインテットを担うあと2人はいずれも60年代半ば生まれのアメリカン。マーク・ターナーとラリー・グレナディアはトリオ“FLY”の同僚であり、共演機会の多い間柄だ。両者がラヴァのアルバムに参加するのは今回が初めて、というのが本作の新しい要素となる。全員による2曲の即興演奏を除き、全曲を手がけたラヴァは、ターナーの存在を念頭に置いて曲を書いており、それこそがこの新プロジェクトの重要な特色の1つと言っていい。
詩情豊かなれど決して甘さに流れない#1、作曲と即興がバランスよく融け合った#3、イタリアンらしい口ずさめるメロディーを持つ#4、ラヴァ流ビバップのような趣が楽しい#6と、イタリアン&アメリカン・クインテットのメンバー全員が、国境を超えてエンリコ・ラヴァ・サウンドに貢献しているのが素晴らしく胸を打つ。そして75年の『ザ・ピルグリム・アンド・ザ・スターズ』以来、11枚目を数える本作までキャリアの柱を築いてきたECMのレーベル・カラーと重なるサウンドであることも指摘できる。創立40周年を迎えたECMが、先のキース・ジャレット盤と共に記念年の皮切りにリリースする本作。8月に70歳を迎えるラヴァにとってのマイルストーンにもなるであろう。
【収録曲一覧】
1.Lulu
2.Improvisation I
3.Outsider
4.Certi Angoli Segreti
5.Interiors
6.Thank You,Come Again
7.Count Dracula
8.Luna Urbana
9.Improvisation II
10.Lady Orlando
11.Blancasnow
エンリコ・ラヴァ:Enrico Rava(tp) (allmusic.comへリンクします)
マーク・ターナー:Mark Turner(ts)
ステファノ・ボラーニ:Stefano Bollani(p)
ラリー・グレナディア:Larry Grenadier(b)
ポール・モチアン:Paul Motian(ds)
2008年2月ニューヨーク録音