「中国での拘束は政治的カードのこともあるかもしれませんが、中国に不利なことを書かせないなど、余計なことをさせないこともあるのではないでしょうか」
今回の拘束は、香港の民主化運動や歴史問題とは関係ないとみる事情通もいる。
「日本に数人くらいの極めて優秀な研究者です。過去から現在まで幅広い資料にあたり熱心に調べる人です。故意でなく、資料を丹念に調べ、コピーをとっていたら、いつのまにかというリスクがあるのが中国です。何かの行き違いではないでしょうか」
中国での邦人関係者の拘束については、昨年2月に伊藤忠商事の社員が拘束されてから傾向が変わったという。それまでは在日の中国人などが多かった。変化の背景として、習近平(シーチンピン)政権が支配力を強めて忖度(そんたく)が横行し、大したことでなくても今回のような拘束につながりかねなくなったと事情通は指摘する。
日本の中国ウォッチャーは現地に行かず、信頼性に乏しい人も少なくない。今回のような問題が起こると、今後の中国情報はますます「フィクション」になるとの懸念も出ている。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2019年11月8日号