写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)

 アタマきた! イライラする! 若いときと比べ、こうした感情が起きやすくなったという人は多くないだろうか? これは仕方ないことで、人間は脳の「老化」によって総じて怒りやすくなるらしい。しかし、これが原因で取り返しのつかない事故やトラブルにつながることは避けたい。キレやすいと感じる人は、怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」を試してみては。

 9月下旬、記者は都内のある図書館でこんな光景を見かけた。

 昼過ぎ、館内のア席はほぼ満席状態。新聞ラック近くのソファとソファの間には、本などを置くための小さな丸テーブルがある。そのテーブルを挟み、高齢の男性がそれぞれ座っていた。

 そのうち、男性らのせきばらいや舌打ちが耳に入り、さらに「シュッ! シュッ!」という何かがこすれる音が相まって聞こえてきた。視線をやると、2人が丸テーブルを自分の元へ引き寄せ合っていたのだ。

 周囲の人らも気になって見ていたが、騒動はその後、口論に発展。

「なにするんだ!」

「あんたこそ失礼だろ」

 などと言い争い、職員が止めに入ってきた。

 この様子について、精神科医で著書に『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』がある片田珠美さんは、「よくあるケース」という。

「テーブルの奪い合いは『縄張り争い』の行動の一つ。図書館では新聞や雑誌の取り合いもよく起こる。そもそも図書館は定年後の元会社員男性の主な行き場の一つ。無料で長くいられる。だからこうした男性同士の縄張り争いのトラブルが起きやすい」

 認知科学が専門でキレる心理に詳しい名古屋大学教授の川合伸幸さんもこう話す。

「人間が怒る主な理由はいろいろな意味での縄張りの侵害があるからだ。それと自分が自由に動けないということも怒りの原因となる。例えば満員電車内で体がぶつかって口論になるケース。こうした縄張りの侵害は、自分だけでなく家族らに及んでも怒りの原因となる。名誉も含め、縄張りが侵害されることが怒りにつながる」

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教職員いじめも「怒りの置き換え」