転車台で方向転換するきかんしゃトーマス号 (撮影/鮎川哲也)(c)2019 Gullane (Thomas) Limited.
転車台で方向転換するきかんしゃトーマス号 (撮影/鮎川哲也)(c)2019 Gullane (Thomas) Limited.
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煙をあげ、疾走する大樹。昔ながらの雰囲気がある (東武鉄道提供)
煙をあげ、疾走する大樹。昔ながらの雰囲気がある (東武鉄道提供)
今乗れる主な日本のSL (週刊朝日2019年8月16日―23日合併号より)
今乗れる主な日本のSL (週刊朝日2019年8月16日―23日合併号より)

 明治、大正、昭和と激動の日本列島を駆け抜けた蒸気機関車(SL)。現代ではアニメの世界から来たキャラクターとして、はたまた懐かしの汽車ぽっぽとして、老いも若きも楽しませる。この夏、「SLワンダーランド」へ、さあ出発進行!

【きかんしゃトーマス(大井川鐵道)や大樹(東武鉄道)のフォトギャラリーはこちら】

*  *  *

 蒸気機関車は重厚でなければならない。50代半ばの記者の心には、いまも国鉄時代の、真っ黒なSLが雄々しく走っている。根が鉄道好きなだけに、大井川鐵道のSL列車が評判と聞き、乗ってみたくなった。

 いざ現地で「きかんしゃトーマス号」を前にすると、しゃれたブルーの車体が頼りなく見えた。

「おもちゃっぽいよ」

 ちょっと斜めに見ながら乗り込んだ。

 午前10時38分、トーマス号は勢いよく汽笛を鳴らし、新金谷駅を出発。

 車内ではトーマスがいろんなお知らせをする。自分たち蒸気機関車のこと、大井川のこと……。にぎやかな声に耳を傾けながら、沿線に目を向けた。

 そこかしこで人が手を振っている。仕事の手を止めて、一列になって、集団に旗を振る人もいた。速度がゆっくりなので、お互いの顔が見える。

「これは楽しいかもしれない」

 おじさんも少しずつトーマスの世界に引き込まれていく。

 英国紳士のトップハム・ハット卿が飛び出してきて、乗客に丁寧にあいさつをする。車内がイギリスのアニメのイメージを帯びてきた。

 窓の外に目をやると、大井川がのび、日本の原風景がスローモーションのように映し出される。ここは静岡。茶畑の緑と空の青が広がる。

 普段と違う時の流れ。旅情がわいてくるよなあ。

 そんな思いにふけっていると終点・千頭(せんず)駅に到着。約90分のちいさな旅だったが、トーマスの世界に魅了されてしまった。千頭駅にはトーマス号のほか、ジェームス号などが勢ぞろいし、にぎわっていた。

 終点で列車から降り、今度は正面からトーマス号を見つめ、

「楽しかったよ」

 思わず、声をかけた。

 トーマス号を運行する大井川鐵道は、旧国鉄がSLの営業運転を終了した翌1976年、いち早くSLの動態保存に着手した。

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