「大学で国際協力学を学んで、一度はチャレンジしてみたいと思っていたんです。まずは働きながら国内でボランティアを続けて、二足のワラジで忙しくしていましたが、20代後半になって夢にチャレンジできるのは今しかないと上司に相談したところ、育自分休暇を使えばいいと背中を押してもらえました。ただ、同僚からは“辞めちゃうんだ”という感じの反応が多かったかもしれません」(長山さん)

 というのも、同社の育自分休暇はいったん退社する人が対象だからだ。2012年に導入されたこの制度は、35歳以下の社員が対象。期間中には、旅行をするのはもちろん、転職して別会社で働いてもいい。その間は、もちろん無給だが、育自分休暇の認定を受けた社員には「専用パスポート」が渡される。これが、6年以内ならいつでも復職できる証明書となる。

「優秀な社員が外の世界で経験や人脈などを増やしたあと、戻ってきやすいようにしました。これまで27人がこの制度を利用し、4人が戻ってきてくれています」(広報・大川将司さん)

“出戻り1号社員”となった長山さんはボツワナで、現金収入がなく支援に頼るしかなかった先住民族の人々が現金収入を得られるように、アクセサリーや小物を製作・販売するためのプロジェクトを立ち上げた。厳しい環境の中で現地の女性たちにアクセサリー作りを一から伝え、彼女らが自力で製作・販売するための基盤づくりをするという任務を果たして帰国した。

「3年間でやりたかったことは半分くらいできたと思う。この間、会社を離れてわかったのは会社のありがたさでした。SNSなどで仲間とはつながっていたので、戻ってくる場所がないという不安はありませんでした」(長山さん)

 経験とスキルを積んだ長山さんは復職した際に、青年海外協力隊での経験を評価されて温かく迎えられたという。

 ここまで長期間の休暇が取れる企業を紹介してきたが、長いだけが休暇ではない。家族の病気や平日の用事など、急な有給休暇をいかに気兼ねなく取れるようにするかを工夫している企業も増えている。

■有休が取りやすい制度実施で業績は右肩上がり<モバイルファクトリー>
 インターネット関連事業のモバイルファクトリーは2007年に社内制度を刷新して、「カフェテリア休暇」を制度化した。これは付与された有給休暇をすべて消化したあと、目的に沿った休みを6日間申請できる仕組み。例えば、「バースデー休暇」「ボランティア休暇」「ラバーズ休暇」「お祭り休暇」等々、さまざまに名付けられた休暇制度が実施されている。要は、社員が自分の裁量で休めるようにするということだ。

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