ブラス大作戦/レディー・エンジェル107
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女性ばかり19名のビッグ・バンドのデビュー作!
Lady Angel 107

 女性ばかり19名からなるビッグ・バンドのデビュー作だ。このジャンルでは2004年結成のブルー・エアロノーツ・オーケストラや、2005年結成の東京ブラススタイル(通称ブラスタ)が活躍中。女子高生が主役を演じた2004年公開映画『スウィング・ガールズ』のヒットによって、若い女性ジャズ・プレイヤーの人口が増えたことは、好ましい傾向と言える。2年前、久々に母校の大学祭を訪れた時、学生ビッグ・バンドの8割が女性だったのに驚いたのだが、今やそれが普通のようである。

 レディー・エンジェル107(LA107)は藤井郷子オーケストラのトロンボーン奏者であり、ファンク・オーケストラ T.P.O.のリーダーとしても活躍するはぐれ雲永松がバンマスとなって2003年頃から活動をスタート。T.P.O.の妹分バンドとしてT.P.O.レディーズ、あるいはハグレーズ・エンジェルの名称でライヴとメンバー・チェンジを重ね、スキルアップしたこのタイミングで新たなバンド名と共にアルバム・デビューに至ったというわけだ。すでに個人名義やブラスタでも実績があるメンバーが含まれていて、新人集団の色眼鏡で見るのは適切ではない。

 選曲はスタンダードとジャズ・ナンバーが中心で親しみやすい。バンド・アンサンブルの鍵を握るアレンジは永松が大半を手がけており、コンテンポラリーなセンスを盛り込んだ#6、ラテン・リズムで原曲よりもテンポ・アップした#8、バラードが定石のところをビート感を効かせてスウィング・バンドのレパートリーというイメージから脱却した#9と、LA107の魅力を輝かせるための工夫が施されている。ソロイストではワイドレンジでアグレッシヴなアルトのカオリ、お祭り気分のバンド・サウンドに乗ったファンキーなアルトの藤野、セロニアス・モンクの名曲に正攻法で挑んだトランペットの高澤が好演。通例のビッグ・バンドよりもトランペットの人数が多く、パーカッションが入り、ピアノとウッド・ベースではなくキーボードとエレクトリック・ベースであることが、LA107の個性に繋がっている。彼女たちのサウンドの背景には永松がT.P.O.で培ってきたノウハウが息づき、女性ゆえにそれを発展させる可能性を秘める。3曲にチャリートがゲスト参加し、バンドの音楽性と親和性の高い好唱を披露。今後の成長を見守りたいビッグ・バンドだ。

【収録曲一覧】
1. Ike Ike Go Go
2. Nica’s Dream
3. Song For My Father
4. My One And Only Love
5. Everything Must Change
6. ‘Round Midnight
7. Love For Sale
8. Sugar
9. Moonlight Serenade
10. Evil Angels
11. Nica’s Dream (instrument ver)
12. Everything Must Change (instrument ver)
13. Love For Sale (instrument ver)

アルド・ロマーノ:Aldo Romano(ds) (allmusic.comへリンクします)
レディー・エンジェル107: [高澤綾(tp) 藤野美由紀(as) 菅原潤子(g) 渋谷有希子(b)]
チャリート(vo) はぐれ雲永松(produce,arr)

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