しかも、70歳超まで繰り下げる人が増えれば、原則65歳の受給開始年齢そのものを、段階的に引き上げることへの地ならしにもつながる。将来は70歳にならないと年金がもらえない時代が来るかもしれない。
大切なのは、何歳で亡くなるかだけで単純に判断せず、日常生活を制限されずに過ごせる「健康寿命」を考慮すること。
日本人男性の平均寿命は81.1歳まで延びたが、自立して暮らせる年齢の目安である健康寿命は72.1歳。その差9年間は、健康上の理由で自由な生活が送れない可能性が高い。
女性だと平均寿命は87.3歳、健康寿命は74.8歳で、約12年もの開きがある。
この差も考慮して、年金のもらい方を考えよう。元気なうちに早くもらい始め、旅行や外食などを楽しんだほうが、“お得”なケースもあるのだ。繰り下げを選ぶと、体力が落ちてお金を使おうにも使えなくなる年になってから、多く受け取ることになりかねない。
北村氏の試算を基に、健康寿命までに受け取れる受給額の合計を計算した。60歳まで繰り上げて受給した場合と、70歳まで繰り下げて受給した場合とを比べると、男性なら約445万円も繰り上げ受給のほうが多くもらえる。女性は約272万円繰り上げ受給のほうが有利。男女では、男性のほうが繰り上げ受給に向いている。
平均寿命や健康寿命はあくまで目安で、生活習慣などによる個人差が大きい。持病など自分の健康状態をもとに、それぞれが「損益分岐点」を自分で考える。
「繰り上げは厚生年金と国民年金の両方を一緒にしなければなりませんが、繰り下げはどちらか一方だけでも可能です。夫と妻の厚生年金と国民年金を、それぞれいつもらい始めるのか。健康状態も考慮して、複数の組み合わせを検討してみましょう」(北村氏)
繰り下げで受給額が増えても、その分税金や社会保険料がアップすることも知っておこう。増加分をすべて自由に使えるわけではない。北村氏が提案するのは、「キャッシュフロー表」の作成だ。