ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。中国政府が公表したメディアに関する報告書に驚くべき内容が書かれていたと指摘する。
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3月25日、国際ジャーナリスト組織の「国境なき記者団」が、「中国が進める国際メディアの新秩序構築」と題した報告書を公表した。習近平国家主席が進める「新世界メディア秩序」というメディアコントロール戦略を分析し、中国政府がこの10年間に国外メディアやジャーナリストに対する影響力を強化してきたことを明らかにしている。
中国政府が提唱する新世界メディア秩序構想は、敵対する西側諸国のメディアに支配された国際世論の不均衡を是正し、他国のメディアに中国の立場を理解してもらうことを目的としているそうだ。
だが、実際は強硬な海洋進出や他国への情報工作、情報統制、反体制派や少数民族の弾圧に対する批判的な国際世論を抑えつつ、中国の国際的な立場を強化することが狙いだ。
すでに中国国内では、報道、インターネット共に厳しい言論統制が敷かれている。国境なき記者団の2018年世界報道自由度ランキングでも180カ国中176位と、報道の自由や国民の知る権利を著しく制限。国内の情報流通を掌握した中国が、次に国外の情報コントロールに着手したのだろう。
報告書では、外国のメディアやジャーナリストに、「イデオロギー的に“正しい”表現を押し付け、歴史の暗部を隠す」ためのグローバルなプロパガンダネットワークを拡大していると指摘。そのために、硬軟織り交ぜた様々な手法を用いて介入を試みているという。いずれも、中国政府に対する批判を抑制し、好意的な報道を引き出すことを目的とする。
新興国、途上国に対しては、放送設備の近代化のための資金提供や中国国営メディアの大規模な展開、報道機関の親会社の株式取得を通じて、メディアに対する影響力を強化。友好国には、中国国内で実施している情報規制やそのための検閲・監視システムなどを積極的に輸出している。