昭和33(58)年、赤線廃止。以降、三丁目は飲食店街、二丁目はゲイタウンとして、現在も発展が続く。遊廓はもちろん、新宿の赤線を実際に知る“証人”も少なくなった。解体工事がすすむ老舗飲食店のビルを見つめながら、三橋さんがつぶやいた。
「60年ですからね。赤線が廃止された頃のビルが、建て直しの時期にきているんです。淋しいけれど、仕方ないですよね」
新宿の遊廓・赤線の歴史の名残は、ますます薄くなっていく。
「角筈(つのはず)や追分、かつての新宿の地名も消えかけ、記憶も建物も失われていく。その歴史を記録しなければという“研究者”としての使命感と、自分が育ててもらった大好きな街への思い。その二つが重なります」
大規模な商業施設が立ち並び、ゴールデン街は、外国人観光客に人気のスポットとなった。新宿の街は、今日も進化を続ける。(文/太田サトル、本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2019年3月15日号