長く伸びた茎の先に一輪の花をつけて風に揺られている姿は、雑草と呼ぶのはもったいない可憐さである。こんなにステキな花が河原や道端に咲いていることが、信じられない。
もうひとつは、花びらの形が端正を極める丈の低い花である。
花弁の色は純白で、中心部が薄紫に染まっている。大センセイ、この花を見る度に、女性が大学の卒業式なんかで着る矢羽柄の着物を思い出す。まさに“日本の美”と呼ぶに相応しい凛とした花なのである。
大センセイ、このお気に入りのふたつの花の写真を撮って、SNSに投稿した。
すると、予想もしていなかったコメントが寄せられたのであった。
ポピーのようなオレンジ色の花には……。
「それは、ナガミヒナゲシという外来種です。根から毒物を出して周囲の草花を枯らしてしまうので、駆除の対象にしている自治体もあるはずです。見つけ次第、引っこ抜きましょう」
なんだか、ものすごく悪いヤツみたいである。
そして、あの“日本の美”には……。
「これは日本の花ではなくて、ニワゼキショウという外来種ですよ。もともとは観賞用として輸入されたものが、野生化したようです」
まさか、これが日本の花ではなかったなんて!
大センセイ、桜を見るとすぐ「日本の美」だとか詠嘆する手合いが大嫌いだが、自分が日本の美として愛でていた花が外来種だったとは、なんともマヌケな結末であった。
※週刊朝日 2019年3月8日号