ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。フェイクニュースの共有と関連する二つの特性を説明する。
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2016年の米大統領選挙期間中、フェイスブックを始めとするソーシャルメディアに氾濫(はんらん)したフェイクニュースは、世界的な注目を集めた。その後、ロシアの選挙干渉疑惑と関連して、その規模や影響度合いについての分析が進められてきた。その一方で、どのような人が選挙期間中にフェイクニュースを拡散していたのかという点については、十分には明らかにされてこなかった。
今年1月、ニューヨーク大学とプリンストン大学の研究者らがその点に光を当てる研究を発表した。この研究は、1191人のフェイスブックユーザーの協力を得て、大統領選挙期間中のフェイスブック上での実際の活動を調査。フェイクニュースの共有(シェア)と、ユーザーの収入や年齢、性別、学歴、人種、政治的イデオロギーなどの人口統計学的特性との関連性を分析した。
その結果、フェイクニュースの共有と関連する二つの特性が明らかになった。一つは「政治的イデオロギー」。リベラル・左派的なユーザーよりも保守・右派的なユーザーのほうがフェイクニュースを共有する傾向が強い。民主党支持者の4%に対して、共和党支持者では18%ものユーザーがフェイクニュースを共有していたという。
この違いは、16年の米大統領選挙期間中に作成されたフェイクニュースの大半が親トランプ的であったことに起因すると、研究者らは見ている。
もう一つ、研究は興味深い特異点を見いだした。フェイクニュースのシェアと「年齢」の相関関係だ。年齢が上がるほどに、フェイクニュースの平均共有回数は増していたという。この傾向は政治的イデオロギーなど他の特性の影響を排除してもなお強固に示され、若い世代(18~29歳)と比較して、65歳超では約7倍も共有していた。