そして、中間選挙で共和党が敗れれば、トランプ氏の戦略は変わらざるを得ないと捉えられていたのだが、ここに来て変わらないという捉え方が多くなった。米中新冷戦に対して、議会も民主党もトランプ戦略に合意しているからである。

 米中新冷戦がどこまでエスカレートするのか。そして、日本はどうすべきなのか。実は、これが本原稿の主題なのである。

 産経や読売、そして外務省も、日本は対米関係を強化して、中国には厳しく対応すべきだとして、安倍首相も当然こうした姿勢で中国に対応するはずだと捉えていた。

 ところが、10月26日に北京で行われた日中首脳会談の冒頭で、何と安倍首相は、「今回の私の訪問を契機として、日中関係を競争から協調へ、新しい時代へと押し上げていきたい」と呼び掛けた。習近平国家主席は安倍首相の発言に同意するように耳を傾けた。安倍首相は、産経、読売、そして外務省の予想を裏切り、日中の“共存共栄”を謳い上げたのである。だが、産経、読売は批判できない。ただし、西村康稔官房副長官は、首相が日中関係の道しるべとなる三つの原則を確認したと言っているにもかかわらず、それを否定した。外務省の困惑をみっともなく露呈させたわけだ。だが、首相の発言を否定することに、どんな意味があるのだろうか。

週刊朝日  2018年11月16日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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