田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
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(イラスト/ウノ・カマキリ)

 ジャーナリストの田原総一朗氏は、米中の対立が激化する中で日本がどのような立ち位置で対応していくのか注目する。

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 この原稿が店頭に並ぶ11月6日は、米国の上下両院の中間選挙の投票日である。読者の手元に届くころには勝敗が明らかになっていて、特に下院でトランプ大統領の共和党が勝った場合はなぜ勝ったのか、そして敗れた場合にはなぜ敗れたのか、という解説が出ているであろう。

 この中間選挙は、早い段階から世界中の注目を集めていた。その勝敗によって、トランプ氏の戦略が大きく変わる、と予測されていたからだ。もしも民主党に敗れれば、トランプ氏の戦略は混迷する。

 トランプ氏は、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNなどのマスメディアが、いずれもヒラリー・クリントンが勝つと断定的に報じていたのを逆転させて、大統領に当選した。それは、歴代大統領が絶対に明かさなかったホンネを露骨なまでに露呈させたためだ。

 トランプ氏は、米国は第2次世界大戦後、世界の国々の犠牲になり続けてきたのだと強調した。全土が戦場となった欧州を復興させるために、マーシャルプランで膨大な資金を投入し、多くが戦場となったアジアの国々を復興させるためにも膨大な資金を投入した。さらに冷戦時代には、ソ連の侵略から西側の国々を守るために大量の軍隊を派遣し、当然ながら膨大な金を投じた。このために米国の経済力は弱体化した。しかも、レーガン大統領以後、グローバリズムの怒濤によって、米国の多くの企業が工場をメキシコやアジアの国に移設した。中西部の旧工業地帯は廃墟のようになり、多くの米国人が職を失った。つまり、米国の経済はボロボロになったわけだ。

 そこでトランプ氏は、もはや米国を世界の犠牲にはしない、米国第一主義でいく、と宣言したのである。

 メキシコとの国境に高い壁をつくる、イスラム圏からの入国を禁止する、イランとの核合意やパリ協定、INF全廃条約からの離脱などを宣言し、中国との貿易戦争は覇権戦争と化した。いまや、米中は新冷戦状態だと世界は見ている。

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