作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は台湾で流れる「慰安婦」像のニュースについて。
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台湾の友人から連日のように「慰安婦」像を蹴った男のニュースが送られてくる。
今夏、台南市に「慰安婦」像が設置された。その抗議に訪れた日本人団体の一人が、像を足蹴にするポーズを取り、そばにいた別の男に写真を撮らせた。その様子は台湾で大きな衝撃をもって報道された。
台湾人の彼女は、私が「日本はとんでもない男尊女卑の国。本当に生きにくい」と嘆くと、いつもこう言っていた。
「日本ほど住みやすい国はないよ。だいたい完璧な国など、どこにもないし」
そういう彼女は、戒厳令が解かれた数年後にイギリスに留学している。その後、とんでもない額の給与と引き換えに命を削るような働き方を長年続け、アジアの女が世界でどんな目にあうのかを私は永遠に語り続けられると言い、「日本は住みにくい」と嘆く私を真顔で戒める40代だ。マドンナの存在を87年に知った彼女にしてみれば、幼い頃から外国文化を味わえた私の人生も、電車がオンタイムに来るのを当然だと思う私の感覚も、選挙の結果に怒る私も、どんなチープな食堂でもそこそこのサーヴィスを受けられると信じて疑わない私も、「日本人」だから。それに、性差別は日本だけの問題じゃないしね、と。