
料理や田園生活などをテーマに、執筆活動を続ける玉村豊男さん。長野県でワイナリーとレストランを経営し、理想の田舎暮らしを実践なさっていることでも有名です。マリコさんとは、お互いのデビュー前からのお付き合いとあって、対談の場にはリラックスした雰囲気が流れたのでした。
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玉村:軽井沢に8年くらい住んでたんですけど、体をこわして、野菜でもつくろうかなと思って景色のいいところを探して、今のところ(長野県東御市)に移ったのが91年。最初の10年くらいは夫婦二人だけで畑をやって、ちょっと若い人に手伝ってはもらったけど、野菜とか唐辛子とかをけっこう東京に出荷してたんです。46歳から58歳くらいまではほんとによく働きました。そのあと、ワイナリーをつくることになってからはいろんな人がかかわるようになって、畑も広がっていって。僕らが朝から晩まで働くことはなくなって、マネジメントみたいなことをするようになりましたね。
林:「都会から来たインテリなんか、しっぽ巻いてすぐ帰るさ」ってみんなに思われたそうですね。
玉村:都会から来た物書きが住んで、二人で農業をやると言っても、たいてい信用しないじゃないですか。でも、一生懸命やってると、見に来て「ほんとにやるのか」と思って、そのうち「うちの畑、雑草が多くて恥ずかしいから、少し手入れしないと」とか、だんだん認められてくるんですよ。まじめにやっていれば。
林:でも、そうなるまで時間がかかるんじゃないですか。
玉村:村の生活というのは英国のクラブみたいなもの。新しい人を入れるときは慎重になるし、入るほうもなじむまでに時間がかかる。地元の人たちは何代も前からそこに住んでいる同窓会みたいなものだから、そこに外から入ってくれば、しばらく様子をうかがいます。でも、今はもう20年以上もたったから、僕らもむしろ年寄りのほうに入ってきたし、いい仲間で楽しいですよ、田舎は。