ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
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あの『ヒーロー』を再び!(※写真はイメージ)
あの『ヒーロー』を再び!(※写真はイメージ)

 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「小柳ルミ子さん」について。

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 サッカー、やっと終わった。後半は静かなものでしたが。しかしながら人生とは分からないものです。まさかこの私が日本代表ユニフォームを着てテレビに出るなんて。8年前、日本戦が行われていることも知らず、青いTシャツで歌舞伎町のドン・キホーテへトイレットペーパーを買いに行ってしまい、無差別にハイタッチを求められたあの日からは想像もつきません。

 想像もつかなかったと言えば、小柳ルミ子さん(以下:ルミ子)です。名実ともに芸能界を代表するサッカーマニア。近い将来、FIFAの理事ぐらいにはなってしまうのでは、という勢いです。昔から、これと決めたらとことん極めるのがルミ子という女。三井ゆり(3級審判員資格保持者)レベルで済むはずがありません。今やルミ子が発する「メッシ!」には、吉永小百合さんの「シャープ」と同じ威力と値打ちがあります。

 思えばルミ子ほど変化と進化を遂げてきたスターはいません。宝塚音楽学校を首席で卒業するも、とっとと退団し芸能界デビュー。『わたしの城下町』『瀬戸の花嫁』といった大ヒットを次々と飛ばします。天地真理さん南沙織さんとともに『新三人娘』として70年代前半のアイドル界を席巻していた時代には、豊満な胸はイメージにそぐわないとサラシを巻いていたという伝説も。しかしルミ子は、そんな“清純派”に留まるタマではありませんでした。叩き上げの歌唱力とショウビズに対するアクなき向上心で、早々にアイドルを脱却し、70年代後半にはオトナの歌手へと成熟を遂げます。

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