津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
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著作権指令改正案が議論された欧州議会=仏ストラスブール (c)朝日新聞社
著作権指令改正案が議論された欧州議会=仏ストラスブール (c)朝日新聞社

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。「ウィキペディア」イタリア語版の機能停止から見る、海賊版対策の副作用について解説する。

【写真】著作権指令改正案が議論された欧州議会

7月3日、インターネット百科事典「ウィキペディア」のイタリア語版が突如機能を停止した。6日時点では、どのページにアクセスしても、イタリア語版ウィキペディアコミュニティーの声明文が表示されるようになっていた。

 イタリアに続き、スペインやポーランド、ラトビアなどのウィキペディアも同様にブラックアウトした。声明では欧州連合(EU)の進める著作権指令改正案が「インターネットの自由を損ね、ウィキペディア自体を危機に陥れかねない」と批判。その抗議として機能を停止したと説明している。5日の欧州議会本会議で、この指令案に反対票を投じるよう議員に伝えてほしいと訴えた。

 EUの著作権指令案をめぐっては、ウィキペディアのみならず、多数のIT関係者、学者、市民団体、ネットコミュニティーからも「自由な情報共有を害する」として猛烈な批判が寄せられている。特に問題視されているのが、第13条と第11条だ。

 第13条は「著作権フィルター」とも呼ばれ、あらゆるウェブサービスに利用者から投稿される文章、音声、映像、画像、プログラムコードが、著作権を侵害していないかを確認するフィルターの導入を義務づけている。つまり、すべてのウェブサービスに強力な海賊版対策を求めるということだ。

 しかし、現実問題として、利用者が投稿するすべてのコンテンツを事前にチェックする著作権フィルターの導入・維持には莫大な費用がかかる。豊富な資金を持ち、すでに同様のシステムを実装しているユーチューブやフェイスブックはともかく、導入を迫られる中小、ベンチャー企業には極めて重い負担だ。結果的に競争が阻害され、大手プラットフォームによる市場支配を強化、固定化する懸念が指摘されている。

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