<稲田龍示弁護士は自民党の稲田朋美政調会長のご主人。稲田朋美政調会長は、第2次安倍内閣発足時に行政改革担当相となり、一昨年9月には党三役に抜擢。二階俊博政務会長と親密な関係>
そのほか、同年1月27日に、近畿財務局や大阪航空局の担当者6人が、稲田氏の事務所を訪問した記録も残されている。籠池夫妻も同席するなか、稲田弁護士は冒頭にこんな話をしていた。
<過去から籠池理事長とはお付き合いがあり、尊敬している。(中略)今回の件をお聞きして、複雑な話になっているとは感じたが、理事長が教育者として努力していることも承知しており、これまでの国の対応に不信感を持っていることについては、法律的な観点ではなく心情的に理解できるもの>
<本件について、今後、顧問弁護士を引き受ける可能性もあるが、本日時点では事件受任している立場にはない。本日は同席させていただいて、理事長からのお話を一緒に伺うという立場であることを申し上げる>
そしてその後には、同席した近畿財務局の担当者が書いたと思われるメモがあった。
<※稲田弁護士は、定期借地契約書の写しを手元に持っている様子だった>(財務省公表資料では、稲田氏の名前部分は黒塗り。以下、同じ)
同年2月5日の記録では、籠池夫妻の主張と稲田弁護士の意見が合わず、諄子氏は<稲田先生とはもう縁を切った>と述べたことも、メモに残されている。
28日の参院予算委員会の集中審議では、共産党の小池晃参院議員が、稲田弁護士の名前を隠したことについて「なんで黒塗りにしなければいけないのか」と追及。財務省の太田理財局長は「情報公開法にしたがってマスキングして提出させていただいた。何が書いてあるのかについてはお答えをしかねる」と苦しい弁明を余儀なくされた。
安倍首相は稲田弁護士の名前が黒塗りされていたことについて、「稲田議員のご主人が弁護士として関わっていたということはすでに明らかになってることで、稲田さんが二階さんと親しいということは隠すことでもない。私としてはむしろ全部出していただいたほうがよかったと思う」と述べた。
財務省の初歩的ミスで明らかになった稲田氏の名前。これも財務省官僚による新たな“忖度”なのか。4000ページもの文書が公開されても、いまだ明らかになっていない情報があることだけは間違いない。(今西憲之/AERA dot.編集部・西岡千史)