「カリフォルニアのスポーツブランド本社で会ったんです。3歳上のお兄ちゃんの陰に隠れながら、こちらをにらみつけていました。なんだこの生意気なクソガキはと思いましたよ(笑)。目力がすごく、芯の強さはその時から感じました」
一見クールに見えるが、心の内には熱い思いが渦巻いている。平野が競技を始めた4歳の時から通う、山形・小国町の横根スキー場HP責任者の高橋恒行さん(66)は語る。
「歩夢は挑戦することを楽しむんです。小学校4年生ごろには『自分だけの技をやりたい』と主張するようになりました。」
平日は学校が終わればすぐにスキー場にやってきて練習に明け暮れ、休日には営業時間の10時から17時まで滑り続ける。1日に300本滑ることもざらだったという。
挑戦することが楽しくてたまらない。そんな思いを見せつけたのは決勝の舞台だった。予選3位から巻き返すべく、大舞台で縦2回転、横4回転の大技「ダブルコーク1440」に果敢にチャレンジし、連続成功。五輪史上初の快挙だった。