アマゾンは声明から10日後に態度を軟化させ、クロームキャストの取り扱い再開の方針を明らかにした。一方で、ファイアTV向けにウェブブラウザーを提供し、ユーチューブアプリが使えなくなっても、ブラウザー経由で視聴できるようにした。このあたりは、グーグルとの交渉を優位に進めるため、あるいは交渉決裂に備える側面もあるのだろう。
なぜこれほどまでに関係がこじれているのか。グーグルは検索エンジンから、アマゾンはネット通販から成長を遂げ、事業の拡大・多角化によって、次第に事業領域が競合するようになってきている。もっとも競合している最前線がスマートテレビデバイスやスマートスピーカーなのだ。とりわけグーグルはスマートスピーカーでアマゾンに大きく後れを取っており、挽回(ばんかい)に躍起になっている。そうした状況を背景に、アマゾンの競合排除的なやり方に意趣返ししたのが今回の措置と言えそうだ。
しかし、それまで使えたり、購入できたりしたものが企業の都合で制限されるというのは利用者にとっては迷惑な話。適切な競争はサービスの向上や価格の適正化につながるが、今回の件は消費者の選択肢を奪うという点でデメリットばかりが目立つ。このまま泥仕合を続けるのではなく、どこかで“手打ち”にしてもらいたいものだが……。
※週刊朝日 2018年1月19日号