


ここ数回、ウェスト・ヴィレッジのクラブの紹介が続いた。今回は、5thアヴェニューを越えて(5th アヴェニューを境にニューヨーク市の住所は、EastとWestに分かれている)、やや東側にシフトしてみる。ニューヨークには、数十ドルのミュージック・チャージがあって、毎日本格的な演奏を聴かせるお店以外にも、前回紹介したカフェ・ループのように、週末だけバンドをブッキングしているレストランも多くあり、これから頭角を顕す若手から、驚くようなビッグネームが、ノーチャージ、もしくは格安で演奏していることがある。今回紹介する、ニッカボッカー・バー&グリルも、そんな気軽に音楽を愉しめる店の一つだ。
Tボーン・ステーキで知られ、アペタイザー・メニューも充実しており、毎日ランチから開くこの店は、毎週、金曜と土曜の夜は、ジャズが流れる。バー・スペースと、ダイニングの間にグランド・ピアノがあり、ドラム・レスの編成が基本だ。ライヴといっても、眉間にしわを寄せてシリアスに音楽を聴くという雰囲気ではない。バーではテレビでスポーツ中継も流れ、食事やお酒を楽しみながら、しかし演奏は、ジョアン・ブラッキーン(p)や、ロン・カーター(b)など超一流のメンバーが、$5.00ほどのチャージで聴くことが出来るというビストロである。ワイン・リストも充実しており、数人でのハング・アウトだったら、ボトルでオーダーすることをお勧めする。1977年開店以来、すっかりグリニッチ・ヴィレッジに定着し、俳優のリチャード・ギアや、スーザン・サランドンも、お気に入りのバーに挙げている。
ふらりと立ち寄ったこの日も、ルー・ソロフ(tp)、バスター・ウィリアムス(b)、デューク・エリントン・オーケストラのリーダー、トミー・ジョンズ(p)のトリオが、小粋なスウィングを聴かせてくれた。いつ訪れても、素晴らしい演奏と、美味しいお酒と食事がサーヴされる、ヴィレッジの週末の定番コースである。
■The Knickerbocker Bar & Grill
33 University Place
New York, NY 10003
tel. 212.228-8490
http://www.knickerbockerbarandgrill.com/
11:45AM~1AM(火~木)~2AM(金、土)~12AM(日、月)
ライヴは金、土の9:45PMから3セット