財務省の法人企業統計によると、金融、保険を除く全産業の経常利益は、直近の2017年4~6月期に過去最高の22兆3900億円に達した。第2次安倍政権が発足した12年10~12月期の12兆7901億円から約10兆円増えたことになる。企業はもうかっているのだ。

 これに対し、企業の人件費は44兆3692億円から43兆447億円へと、横ばいにとどまっている。

 経常利益は、売り上げから営業活動に必要な経費を差し引いたものだ。人件費も必要経費に含まれる。企業は従業員の給料を抑えつつ、もうけを増やしてきた。

 この期間に、企業が手元にため込んだ「内部留保」(利益剰余金)は、12年度の304兆円から16年度に406兆円に増えている。

 企業ばかりもうかり、そのお金は使われないまま社内に積み上がっていく。一方で給料は増えず、家計は苦しい。こうした構図が見て取れる。

「給与が増えなければ消費に回すお金もなかなか増えていきません」(斎藤氏)

 安倍首相が選挙戦でしきりにアピールした「雇用の改善」についても、課題は多い。

 求人が増えているのは建築や運輸、飲食関連や福祉・介護といった分野だ。人気の高い「一般事務」の有効求人倍率は8月で0.34倍と1を大きく下回る。求職者は希望の仕事が見つからず、企業側は人が集まらずに困るという「雇用のミスマッチ」が拡大している。

 そもそも求人が増えたのは、アベノミクスの効果よりも、急速な少子高齢化で働く人が足りなくなったことが原因と言われている。建設やサービスなどさまざまな現場では、人手不足のなか長時間働かざるを得ない人たちも多い。

 労働問題に取り組むブラック企業ユニオンの坂倉昇平代表はこう言う。

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