高田漣が歌うブルースには、ほのぼのとしたユーモアやくすぐり、オチがある。それは紛れもなく父の作風から学びとったものだろう。高田渡没後10年を機に発表した『コーヒーブルース~高田渡を歌う~』(15年)が大きな転機となったようだ。
弾き語りを念頭に置いて手がけたというバラードの「思惑」は、マルチ・プレイヤーとしての評価を得てきた彼が、シンガー・ソングライターとしての真価を問うた曲だ。ソウルフルな歌唱がその成果を物語っている。父の背を追う高田漣の今後が楽しみだ。
最後に、ベルウッド・レコードをめぐる最近の動きを追記しておこう。
まず創立45周年を記念し、ロック、フォークの20作品が9月に新装再発売された。はっぴいえんど、はちみつぱい、高田渡、加川良、ザ・ディランIIなど、主に1970年代に話題となった名盤ばかりである。
どの作品にも新規のライナー・ノーツがつく。あがた森魚の3作品はあがた自身、小室等の『私は月には行かないだろう』や『シングルス・六文銭』は小室自身、高田渡の3作品は高田漣といったように、アーティスト自身や関わりの深い人物が書き下ろしている。
これまで入手困難だったベルウッド関連のアナログ盤7インチの復刻シングル9作も発売され、細野晴臣「恋は桃色」、大瀧詠一「恋の汽車ポッポ」などがオリコンにチャート・イン。名曲としての評価を裏付けるような出来事だった。(音楽評論家・小倉エージ)
●『ナイトライダーズ・ブルース』(ベルウッド/キングレコード KICS-3525)