記者会見を開いた前川氏 (c)朝日新聞社
記者会見を開いた前川氏 (c)朝日新聞社

 安倍晋三首相の「腹心の友」が理事長を務める加計学園の獣医学部新設が「総理のご意向」で進められたことを示す文部科学省の内部文書はやはり「本物」だった。文科省の前川喜平・前事務次官が5月25日に会見し、安倍政権に反旗を翻した。官邸の「知らぬ存ぜぬ」は卑劣ではないのか?

「安倍首相は森友・加計疑惑が長引いていることを『うっとうしい』と周辺に漏らしていた。与党国対には追及逃れのため『今国会の大規模延長はせず、都議選前までの小幅延長で乗り切れ』と指示を出している。本格的な対応はサミット後に練るが、予想以上に早い展開だ」(官邸関係者)

 そればかりか、早くも強引な“前川封じ”の動きがあるという情報もある。

「菅義偉官房長官らは前川氏に激怒している。間接的だが官邸から法務省と最高検を通じて地検特捜部に『天下りのあっせんなどいろいろスキャンダルがあるので、立件を視野に調べろ』と示唆があったとか。立件は難しくブラフの意味合いが強いと思うが、政権寄りのメディアは動くでしょうからね」(法務省関係者)

 それほど、前川氏による告発は重かった。会見で国家戦略特区制度での獣医学部の新設について「総理のご意向だ」「官邸の最高レベルが言っていること」などと書かれた文科省の内部文書について「私が在籍中に共有していた文書。確実に存在していた。あったことをなかったことにはできない」と、語気を強めて本物だと証言。文科省の内部調査では資料を「確認できなかった」としたが、前川氏は「見つけるつもりがあれば、すぐに見つかるもの」と異論を唱えたのだ。

 また、特区認定の手続きについて「最終的に内閣府に押し切られた」と、内閣府の“ゴリ押し”があったと主張。その上で、国会の証人喚問について「あれば参ります」と言い切った。

 だが、政府は黙殺するつもりだ。元上司の松野博一文科相は「辞職した民間人の発言についてコメントする立場にない」。「文書は怪文書のようなもの」と主張していた菅官房長官は前川氏が1月に文科省の天下り問題の責任をとって辞任した経緯について「当初は自ら辞める意向を全く示さず、地位に恋々としがみついた」と、露骨な“人格攻撃”で応じたのだ。

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