渋谷容疑者の名前で保護者に配られた募金のお願い (c)朝日新聞社
渋谷容疑者の名前で保護者に配られた募金のお願い (c)朝日新聞社

 千葉県我孫子市でベトナム国籍の小学3年生、レェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9)の遺体が見つかった事件で、県警は4月14日、渋谷恭正(やすまさ)容疑者(46)を死体遺棄容疑で逮捕した。保護者会長を務め、地域の子どもたちを見守ってきた男が犯人だとしたら、どうして危険な妄想を描くようになったのか──。

 事件が発覚するまで、渋谷容疑者は、はた目には子煩悩で「いいお父さん」の印象を持たれていたようだ。子どもを自転車の荷台に乗せて送り迎えしたり、サッカーボールを持って一緒に遊びに出かけたり、親子仲むつまじい姿を近所の住人は見かけている。

 二小会の会長職を昨年度から務め、今年度も立候補した。近く総会で承認を受け、2期連続で会長に就任する予定だった。みんながやりたがらない面倒な会長職を率先して引き受けるので、周囲からありがたがられる存在でもあった。模範的な保護者像が浮かぶが、その半面、聞こえてくるのはいい評判ばかりではない。

 ある学校関係者は、「二小会の役員は女性ばかりで、男性が会長になるなんて聞いたことがない」と不思議がった。

 30代の保護者の女性によると、渋谷容疑者は保護者会で浮いていたようだ。

「他の役員との間で、意見の相違があったと聞いています。渋谷は『ずっと会長をやっていたい。でも周りの反対もあるんです』とこぼしていたことがありました。ちょっと変わった人です。保護者会の委員会などで自分の意に沿わないことがあると、『やり方が気に入らない』などとパソコンでベタ打ちした3~4枚の長文の手紙を送りつけたこともあった。受け取ったお母さんは憤慨していました」

 実際に今年度の二小会の会長に立候補したとき、保護者たちから反対の声が上がった。「次は絶対に渋谷にはやらせない」と言う強硬派もいたというが、事件が起きて学校は混乱、選挙どころではなくなった。

 3月に開かれた保護者会が紛糾したこともあった。小学校関係者の一人がその理由を明かす。

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