「陸自隊員の多くが銃剣道を経験するが銃剣道が自衛隊員の意識を歪めています。自衛隊では銃剣道(その他スキーや持続走)等の競技に勝つことが部隊指揮官の昇進を左右します」(元陸自2尉)

 このため多くの部隊では競技に参加する隊員は課業を免除され競技練習に邁進する。つまり自衛隊ぐるみで仕事をサボらせて競技に熱中している。自衛隊の任務は国防よりも「運動会」で勝つことらしい。

 自衛隊の「兵隊」は充足率が低い。任期制の2士、1士は定員の4割程度、その上の士長を加えても7割程度だ。「運動会」で「兵隊」を無駄遣いする余裕などないはずだ。

 近年、国防強化のために自衛隊の増員をせよという声も少なくないが、不毛な「運動会」を止めれば、即座にかなりの数の増員と同じ効果が得られる。しかも人件費の増加は不要だ。

 そもそも銃剣道は殆ど実戦では役に立たない。

 近年の軍隊では防弾チョッキを着用することが銃剣道を役に立たなくしている。

「防弾チョッキを着ていれば、心臓を突いても致命傷どころか傷もつきません。また喉にしても防弾チョッキには喉をカバーするコンポーネントが装着されることが多くなっており、こちらも致命傷を与えにくくなっています。着剣した小銃で相手に打撃を与えるならば、露出している顔や首、手足を狙う必要があります」(元陸自看護関係者)

 銃剣道の木銃の長さは約1.7メートル。かつてのボルトアクション方式の小銃に銃剣を着剣したものを模している。

 だが現在の自動小銃の全長はかなり短い。自衛隊の89式小銃は約91センチ、刃渡り約15センチの89式多用途銃剣を着剣しても1メートルちょっとしかない。

 米軍の主力のM4カービンに至っては、全長約84センチ、銃床を縮めると76センチしかない。

 しかも、現在の自動小銃は小口径化されて銃身が細い。その分強度は低い。フレームもアルミ合金や鉄のプレス加工、ポリマー製が多い。また銃床も折り畳み式か伸縮式か、あるいはその両方を採用しており精緻である。このため木製銃床の小銃と比べて脆弱で、銃床で敵を殴ると銃自体が破損する可能性が高い。

 そして一部を除いて89式小銃の固定銃床が採用されたのは銃剣道の影響ではないか、とさえ思う。

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