著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回、作曲家・すぎやまこういちさんの侘家古暦堂(わびやこれきどう)の「侘家鶏の水炊き」だ。
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私がゲーム「ドラゴンクエスト」の音楽を手掛けて早30年。曲をゲームに落とし込む作業をする会社が京都にありまして、そちらから昨年末に、ここの水炊きセットをいただきました。これがまあ、おいしくてね。白濁したスープは濃厚なのにしつこくない。これはぜひ、お店にも行かなくちゃ、と。京都出張の際に、家内といそいそと出かけました。
祇園花見小路にあるお店は、和モダンなたたずまい。絶妙な焼き加減の焼き鳥などを味わったのち、満を持して、待望のお鍋との再会です。肉は、専用鶏舎で育てたオリジナル鶏を使用しているとのこと。胸肉は極薄スライスで、しゃぶしゃぶでいただく。もも肉とは味も歯ごたえも異なり、その違いを楽しめます。また、お肉のうまみが出たところで投入した野菜が、スープを吸って滋味深い。
鶏の魅力を何通りにも楽しませてもらいました。「ドラゴンクエスト」の曲名ではありませんが、まさに「冒険の旅」を堪能したわけです(笑)。
「侘家古暦堂」京都市東山区四条花見小路下ル祇園町南側歌舞練場北側/営業時間:11:30~14:00、17:00~22:30L.O./休業日:不定
※週刊朝日 2017年4月7日号