林:宇都宮さんが一生懸命切り開いた耕地にスッと入ってきて、お金だけ取っていくわけですね。当時はコワい人とも対決したり?
宇都宮:かなり乱暴な取り立てがありましたね。私はケンカに強いほうじゃありませんが、私が逃げたら依頼者が被害にあってしまう。自分より弱い立場の人を守るためには、頑張らなきゃいけない。そういう思いは私に限らず、多くの人が持ってると思いますけどね。
林:依頼者からは、ちゃんとお金をもらえるんですか。
宇都宮:取りっぱぐれることはありますが、分割でもらえれば事務所はなんとかやっていけます。私は2回目のクビになったあと、銀座に事務所を構えたんですよ。
林:まあ、すごいじゃないですか。銀座のどこですか。
宇都宮:松坂屋の裏側です。自宅が江東区なのでそのあたりでと思っていたんですが、事務員さんの面接をしたら、「銀座なら勤めます」と言う人がいましてね(笑)。それで急遽(きゅうきょ)、銀座で事務所を借りて30年ぐらいやりました。ところが06年に画期的な法改正があり多重債務事件が激減して、それで昨年の1月に家賃が安いところに移りました。事務所の若手弁護士や事務員さんは冗談で、「いよいよ都落ちですね」なんて言いますが、これは誇るべきことなんです。私たちの運動が成功したということですから。
林:それなのになぜ、景気よくCMを流している事務所があるんですか。
宇都宮:一時は300万人ぐらいいた多重債務者が12万、13万人になったと言われていますが、それをCMでかき集めているんでしょう。
※週刊朝日 2016年10月14日号より抜粋