7月31日に投開票された都知事選。立候補を表明しながら、「野党統一候補を」という声を受け、断腸の思いで出馬を見送った宇都宮健児さん。作家・林真理子さんとの対談で、知られざる弁護士としての素顔をみせた。
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林:弁護士さんでもすごくお金を儲けてる人っているじゃないですか。紀尾井町にビルを持ってたりして。宇都宮さんはそういう方向にはいかなかったんですね。
宇都宮:私は要領の悪い弁護士だったので、事務所を2回クビになっているんです。司法試験には早く受かったんですが、営業活動が苦手でクライアントが増えない。普通の弁護士さんは、既存の弁護士事務所に勤めながら同窓会やライオンズクラブ、ロータリークラブに通って名刺を配ったり、中小企業のおやじさんたちと一緒にゴルフに行ったりして人脈をつくっていくわけですね。事務所に勤めて給料をもらっている弁護士を業界では「イソ弁」と言うんですが……。
林:イソベン?
宇都宮:「居候弁護士」とか「イソギンチャク弁護士」。イソ弁生活を4、5年やって独立するのが一般的なんです。ところが私は8年やったところでボス弁から、「宇都宮君、そろそろじゃないか」と肩たたきされました。1回目のクビですね。それで就活をしてなんとか次の事務所が見つかり、2回目のイソ弁生活が始まりました。
林:まあ、就活を。
宇都宮:そのころからサラ金問題を担当するようになったんですが、事務所にはガラの悪い業者からの脅迫電話が殺到したりして、ボス弁から「うちに勤めるならサラ金問題から手を引いてくれ」と言われまして。2回目のクビですね。それで弁護士になって13年目に独立せざるを得なくなりました。
林:最近、「払いすぎていませんか?」とかいう広告をたくさん見かけますけど、ああいう弁護士事務所ってどうなんですか。
宇都宮:私は問題のある事務所だと思っています。昔は非常に困難な仕事だったので、誰もやりたがらなかったんですね。それでも判例を獲得したり法改正があった結果、過払い金の返還請求ができるようになった。私はずっとそういう運動をやってきましたが、彼らはそれにまったく参加していない人たちなんです。正直苦々しく思っています。