その件が念頭にあったのだろう。天皇陛下は、12月の誕生日会見で「年齢というものを感じることも多くなりました」と語った。
「生前退位」問題では、NHKはすでに第一報の段階で、「陛下が自らお気持ちを公表したいと考えている」とまで踏み込んだ。
皇室担当の記者が言う。
「実際、陛下は、ご自身の状況をご自分の言葉で、国民に説明したいと願っていらっしゃるようです。それが3.11のときのように、陛下のビデオメッセージになるのか、文書になるのかはわかりません。すでに、陛下の文書の内容も大筋は固まっているとの情報もあります。あとは公表の時期。早ければ8月とも言われています」
陛下が、「退位」「譲位」という表現を用いたかはわからない。天皇家の家族会議などで皇太子さま、秋篠宮さまも了承しているとも言われている。
「象徴天皇として人びとに寄り添い、なぐさめ、祈り続けることで平成の天皇像を築き上げてきた」(前出の宮内庁幹部)陛下にとって、天皇としての仕事が十分にできないまま、天皇の地位にとどまることを潔しとされないのだろう。
元朝日新聞編集委員の岩井克己氏は14日付の朝日新聞で、「務めを果たせるうちはベストをつくす」と負担軽減に消極的だった天皇陛下の姿勢を、「積極的象徴天皇」観と表現した。
岩井氏は記事で、5年ほど前から、天皇陛下は大正天皇の病状の深刻化に伴い、皇太子だった昭和天皇が摂政を務めた詳しい経緯や制度的背景について周囲に検討させたと明かした。
宮内庁書陵部から資料を取り寄せ、なぜ摂政しか認めていないのかといったことを丹念に調べさせたようだ。5年前といえば、2011年2月に天皇陛下は心臓の周りにある冠動脈の精密検査を受けている。このとき、部分的に冠動脈に血管が狭くなる狭窄が見つかり、翌年に心臓のバイパス手術が行われた。つまり、陛下が高齢による健康不安や死生観を意識しだした時期と符合する。