全国に知られる名刹(めいさつ)が不穏な空気で覆われている。
長野市にある善光寺の住職が、職員に対してセクハラやパワハラ行為に及んだうえ、差別に関わる発言をしたとして辞任要求が突きつけられている。
善光寺は天台宗の「大勧進」と、浄土宗の「大本願」が共同管理し、それぞれのトップが住職を務める。渦中の人物は、大勧進の小松玄澄貫主(げんちょうかんす・82)である。
大勧進の傘下にある宿坊25院で構成する「一山」の住職らが、小松貫主の行為に反発。6月23日、「善光寺の尊厳を傷つけ、信徒の信頼を著しく毀損(きそん)した」として、小松貫主の無期限謹慎と本堂への出仕停止、さらには辞任を求める「通告書」を提出した。
セクハラやパワハラの被害に遭ったのは、食堂で賄いの仕事をしている60代の女性たちだ。独身のAさんには、小松貫主はこう言い寄ってきたという。
「一人で寂しくないか。彼氏を連れ込んでいるのか。俺が行ってやろうか」
「食事に連れてってーな。変装して遠くまで行かんとバレてしまうな」
Aさんがあきれて言う。
「しつこく何度も誘われました。すべて受け流してきましたが、寒気がしたこともありました。これが雲上人と言われる人の言葉かと思いました。断り続けたことを根に持たれたのかわかりませんが、8年間やってきた賄いの仕事から売店に異動させられました」
小松貫主の素行を巡っては、女性との交遊などを問題視した月刊誌(2004年)の報道を受け、住職らが辞任を請求。裁判にまで発展した。11年の東京高裁で、辞任の請求は退けられたが、小松貫主が辞める約束をほごにしたとして慰謝料330万円などの支払いを命じられた。
あれからおよそ5年。今度は暴言や差別的な発言にまで及び、トラブルが再熱。
やはり食堂に勤めていたBさんは、13年間賄いに携わったベテランだ。そのBさんは、小松貫主と親しくしている女性との仲を吹聴しているかのようなうわさが立つようになった。