スーさん:そうです。ついていくのが大変です。
堀井さん:とっちらかっている話をスーさんが箒ではき続けてくれます。
スーさん:カーリングみたいにね。堀井さんができるだけ遠くに行けるように露払いしてます。
「OTS」が始まって、一番、恩恵を受けているのは、じつは私たちなんです。お互いに忙しいから、番組がなかったら月1回も会えないかもしれない。毎週、会うから話すこともあるし。その距離感が持てたことも、私たちには大きいです。
──「互助会員」と呼ぶリスナーさんとも距離が近いですね。番組で紹介するメールはどう選んでいるのでしょう。
堀井さん:どれを選ぼうとかまったくなくて、手にとったメールを見ながら喋っています。
スーさん:そこも自由に。
堀井さん:私たちはリスナーさんを動かそうとは一切、思っていないんです。先日のイベントでこんなことがありました。番組で紹介したメールのリスナーさんが来てくださっていたんです。
そのメールは、一本のお芝居がきっかけで、引きこもりのような生活を変えようと上京し、技術を身につけ、転職も経験しながら正社員になり、自力でマンションを買い、一人で暮らす力を身につけた女性からでした。番組でお手紙のようなメールを読んだとき、私たち、思わず「スタンディングオベーション!」と叫ぶくらい、胸に迫るものを感じてしまって。
その回の配信をイベントに参加した方たちも覚えていたんですね。メールを送った女性がいることがわかると、皆さんから拍手が送られたんです。会場がそれまで以上に温かい雰囲気になりました。
スーさん:感動したよね。
堀井さん:そういう方がいる、ということをリスナーさんと共有する場として「OTS」は役に立っているのかもしれません。
スーさん:本当に単純に自由に番組をやっているだけなんです。
堀井さん:予想もしなかったことになっています、いろんなことが。もしかしたら、番組の制作に作為も意図もなく、ただ単純にやっていることが、たくさんの方に聴いてもらえている理由の一つなのかもしれません。
スーさん:番組を始めたら、思っていたより聴いている方が多くて、どんどん増えていって。友達に配るつもりで同人誌を書いていたら、テクノロジーの進化で海外まで届いちゃった、みたいな感じなんです。
(ライター・角田奈穂子)
※週刊朝日 2023年2月24日号