『P.S.元気です、俊平』や『東京ラブストーリー』など多数の代表作があり、「恋愛の教祖」と言われた漫画家・柴門ふみさん。作家・林真理子さんとの対談で最近の女性の恋愛事情について語った。
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林:恋愛とか生活に対する考え方に、傾向みたいなものはある?
柴門:今のアラサーは、50歳ぐらいで独身で残ってる先輩たちを見てるので、とにかく早く結婚しようと決めていて、「自分の仕事の邪魔をしない男」というだけで結婚相手を選んでますね。
林:玉の輿(こし)願望はないんだ。
柴門:全然ないですよ。ただ、商社マンとか代理店、お医者さん狙いのOLさんたちは、「プロ彼女」みたいになって合コンに現れて、さらっていくみたいですね。1対100ぐらいの競争率だと思いますよ。
林:1対100! わっ、大変。
柴門:全部持ってる人ってたまにいるんですよね。斎藤工みたいな顔して、外科医で身長185センチぐらいある男の子がいると、ほんとに群がってますよ、きれいな女の子が。
林:「恋愛したい」という願望は、まだ女の子たちに残ってるんですか。
柴門:私が取材した人は、みんなけっこうすごい恋愛経験を持ってましたね。CA、モデル、受付、女子アナといった「モテ系」の人たちは、いかにモテたかという話でしたが。
林:いやな感じでございます(笑)。
柴門:ネイリストの子もおもしろくて、ヤンキーっぽい感じで、出会い系で男を呼んで楽しけりゃいいみたいな、今ふうの恋愛をしている。でも、「なんでそんな行き当たりばったりのことやってるの?」って聞いたら、「私、恋愛にのめり込むコワいタイプの女なんです。浮気なんか絶対に許さない。だから今はこれでいいんです」みたいな。
林:まあ……。
柴門:みんな激しい恋をしたいという願望はあるんだと気づきましたね、『柴門ふみの解剖恋愛図鑑』の取材で。
林:それは、柴門さんが『東京ラブストーリー』とかを描いてたころと違ってます?
柴門:違ってます。今の35歳以下は、恋愛より仕事ですよ。優先順位が。
林:この本に書いてありますね。女性にとって仕事は、かつて米と野菜しか食べていなかった日本人にとってのチキンと同じだと。一度その味を覚えたらもう後には戻れないって。
柴門:そうだと思います。