
2015年の日本経済をファンドマネジャー、ヘッジファンド、証券会社社長、著名エコノミストなどに予測してもらった。
まずは、日経平均株価と為替の予測。結論から言うと、「株高」と「円安」を予想する専門家がほとんどだ。
なんと、日経平均2万円以上を8人が予想した。最も高かったのは、国際エコノミストの今井澂(きよし)氏の2万5千円だ。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は2万4千円、BNPパリバ証券の河野龍太郎経済調査本部長、マネックス証券の松本大社長、ビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦社長が2万2千円と続いた。
どうしてここまで強気なのか。背景にあるのは、金融緩和を背景にした円安と、それによる企業業績の拡大だ。ビスタマックスの藤原氏はこう言う。
「景気の緩やかな回復と円安により、企業業績が上振れる」
2万円を超えると、ITバブルで沸いた00年4月以来15年ぶりとなる。
安値は、なんと1万6千~7千円におさまった。現状とほぼ変わらない水準だ。つまり、スタート地点がいちばん安くなる可能性があるという。「政局」と「ヘッジファンド」の影響で、2月に一度下がるとの見方が出ているが、1月に上昇するため、下げたとしても、現時点から大きく下回ることはないという。
「新内閣組閣後、しばらくは人事がらみでくだらない政局があるだろうから、2月ごろに1万6500円を予想」(マネックスの松本氏)
「『3カ月間で20%以上の利益が発生した場合、いったん益出しを行う』というヘッジファンドのルールにより2月に利益確定売りが出る」(パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直チーフストラテジスト)
円安は大幅に進みそうだ。1ドル=130円台を予想する人が9人。120円台が5人だ。
「米国の利上げは6月ごろ、日銀の第3弾の追加緩和は10月に予想されるため、年後半に再び円安に勢いがつくでしょう」(ソシエテジェネラル証券の会田卓司チーフ・エコノミスト)
1ドル=130円の水準は、2002年以来だ。
景気は程度の差はあるが、多くが「よくなる」と回答した。福音となりそうなのが、「原油安」だ。直近は、ルーブルの急落を招いているが、そもそも原油安は家計や企業業績にとってコストダウンにつながるため、追い風になる。
三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、
「14年10~12月のGDPは3期ぶりにプラス成長になる可能性が高い。輸出も伸びそうです。足元の原油安のプラス効果も出てくるでしょう。能力増強や人手不足を補うための設備投資も出てくるでしょうね。円安基調が定着すれば、海外に生産拠点を移転する動きもおさまるでしょう」
とはいえ、大企業中心に景気回復したとしても、国民に実感がなければ意味はない。そこで「賃金は上がるか」という質問も行った。「賃金上がる派」の意見はこうだ。
「労働力の枯渇は時間の問題。企業は数年後に人の採用ができなくなる可能性が高い。前倒して労働力を確保しておかなくてはいけない状況だ」(SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミスト)
ただ、全体に波及するにはまだ時間がかかるとの意見もあった。
「賃上げは企業業績と同じく、業種・企業規模ごとにまちまち」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)
「大企業中心に緩やかな上昇となるでしょう。ただ、円安がネガティブに働く産業もあり、格差は出てくるでしょう」(アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役)
※週刊朝日 2015年1月2-9日号より抜粋