堀江貴文氏は、今回の衆議院総選挙を振り返り、政治家にとって何が大切かをこう言う。
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今回の衆議院選挙は戦後最低の投票率だったそうだ。まあ、争点も特にないし、安倍自公連立政権がそれほど支持されていないわけでもなく、野党は突然の解散に準備がまるで追い付いていない様子で、私の知人の立候補者もかなり慌てて選挙準備をしたそうだ。
著名人ならばそれでも追いつけるだろうけど、あまり知名度がない議員候補者はそうはいかない。常に選挙に備えて地元回りが欠かせない。選挙が近づいてきたら冠婚葬祭などの訪問も欠かさない。とはいえ、お金がかかるので常に回り続けるわけにはいかない。
新聞・テレビなどが報じていたように自公の圧勝というわけではなかったようだ。民主は議員数が増えたし、維新も健闘したといえるだろう。共産党は昨今の格差社会問題の喧伝により躍進したようだ。そして勢いのなくなった次世代の党と生活の党が惨敗となった。
個人的に興味があったのは、私が以前出た選挙区で無所属の亀井静香氏が当選していたことだ。相変わらずどんな状況になっても負けない政治家というのは政治力が強い。彼は無所属ながら、今後もずっと政治力を持ち続けるだろう。
対照的に民主党代表だった海江田万里氏は選挙に弱い政治家だろう。弱い政治家はなかなか政治力を持つことができない。政策立案能力があろうが、民主主義における政治家は選挙に強いのが一番大事なのである。
女性や子供にやさしい政策を提案する公明党は、創価学会がバックアップしているのは公然の秘密(?)であるが、彼らの動員能力はすさまじい。私も以前の選挙の時に業務提携(比例は公明党に)をしたが、その30分後の街頭演説会には公明党支持者が大挙して押し寄せていたものだ。
一説には小選挙区の20%の得票を公明党支持者が稼ぐらしく、小選挙区で候補者を擁立していない限りは、連立を組んでいる自民党候補者を応援することになるため、今回のように投票率が低い場合はさらに公明党の票が重要となってくる。この規模で選挙に動員できる日本最大の団体になっていることが公明党、そして創価学会の一番の強みになっているのだ。
創価学会の活動はそれ以外にも年末の第九大合唱に代表される音楽イベントや毎週行われる宗教的な集会などあるが、選挙はその中でも重要なイベントらしく信者には選挙だけ参加する人もいるそうだ。
自民党が公明党と連立を組んでいるのはこれが最大の理由だ。だからこそ消費増税とセットで軽減税率を受け入れざるを得ないわけだ。現在の自民党は守旧派勢力と大胆な改革をしたい勢力がごちゃまぜになっている。だから予算規模はずっと膨れ上がる。
この選挙で一応勝利したことで安倍政権は長期政権となる。おそらく予算規模は減らせない、消費増税は先送り、軽減税率の適用もあるし、プライマリーバランスの黒字化は達成できないのではないか。結局、実質的に円の価値が下がって円建て資産をもっている人たちが損をするような形になるのだろう。
※週刊朝日 2015年1月2-9日号