前出の和知氏が言う。

「杉井氏がNPOの被災地関連事業をやらせてほしいと連れてきたのです。当初は沖縄に福島の農家を連れていくプロジェクトをやるという話だったのですが、全部ウソでした」

 A氏の釈明も聞こう。

「公的な補助金約3千万円が下りなかったことが、ハウスの建設が遅れている理由です。今年は1200万円程度が南相馬市から出るので、計画は進みます。キリンの資金は、畑の借地、耕作、ハウスなどの資材費に使ってしまいました。(JAに未払いがあるのは)不良品のハウスを売りつけられてイチゴに病気が出たからで、残金は払いません。県の専門家もイチゴに適さない造りと言っています」

 だが、本誌が南相馬市や、ハウスのアドバイスをした県の専門家に取材すると、違う答えが返ってきた。

「確かに担当者は来られていますが、補助金のことはまだ相談の状態で、申請も何も……」(南相馬市鹿島区産業建設課)

「JAが納品したハウスはイチゴ栽培用としてちゃんとしたもので、問題があるなどとは言っていませんよ。イチゴ作りは初めてという方が栽培していました」(アドバイスをした福島県の農林事務所の担当者)

 A氏のイチゴ事業に多額の寄付をしたキリンは困惑気味に言う。

「助成金の使途管理は問題ないと聞いています。地元の復興こそが目標であり、コミュニティーの納得を得ながら事業推進して頂ければ……」

週刊朝日 2014年7月18日号より抜粋