アベノミクス効果がうたわれる一方、消費増税もあり圧迫され続ける家庭の財布。しかし、武者リサーチの武者陵司氏(64)は、「日本経済は必ず良くなる」と主張する。その根拠はこうだ。
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日本経済は間違いなく良くなります。多くの企業の賃金は上がり、消費が促されて経済が好循環に入るとみています。
やはり円安が大きな要因です。これまで円高が続いたために、企業は儲かっても利益を賃金として分配せずに留保していました。ですが、将来的に円安が定着する可能性が高くなると、輸出企業を中心に業績への安心感が出てきます。賃金を上げようとする気持ちの余裕が出てくるのです。まずは輸出企業などの賃金が上がり、消費が上向けば、中小企業まで波及するとみています。
円安が続いているのは、日本銀行による大胆な金融緩和が効いているからです。緩和前の円の供給量は先進国のなかで最も少なかったのですが、今では最も多い国になりました。市場に円がたくさん流通すれば、円の価値が安くなるのは当然です。
さらに昨年度、貿易収支が13兆円の赤字になったことも円安に拍車をかけています。貿易赤字は悪いイメージがありますが、いい面もあるのです。
貿易黒字では輸出代金として使うドルが多く手元に残るので、ドルを円に替える必要が出てきます。反対に貿易赤字では、輸入のための代金が足りなくなるので、円をドルに替える必要があります。これはつまり円安要因です。
こうしたなか、長く日本を苦しめてきたデフレの解消も見えてきました。実は、良い影響を与えたのは消費増税です。長い間、企業は生産コストが上がっても、同業他社が追随してこないことを心配して、上昇分を価格に転嫁できていませんでした。消費増税をきっかけに、価格に転嫁しやすくなったんです。硬直していた価格がやっと今、動き始めたのです。
となると、企業は社員の生活水準を保つためにも賃金を上げる必要が出てきます。デフレのときは、「物価が上がらないので生活水準は変わらないだろう」という考えが通用しましたが、もう、そうは言っていられません。
6月ぐらいには物価上昇率や失業率など指標からデフレ脱却が目に見えてきて、日本株が買われ、円が売られる傾向に弾みがつくと考えています。デフレを完全に脱却し、ゆるやかなインフレになれば、東京五輪の2020年ごろには日経平均株価は4万円、1ドル=120円まで株高・円安が進んでいてもおかしくはありません。
※週刊朝日 2014年5月9・16日号