圧倒的な団結が浦和サポーターの強みだったはずだが…… (c)朝日新聞社 @@写禁
圧倒的な団結が浦和サポーターの強みだったはずだが…… (c)朝日新聞社 @@写禁

「ヘイトスピーチ、嫌韓といった現代日本の“危うい空気”が、そのままスタジアムにも流れている。多くの人が、その危うさに鈍感になっているから、あんなことが起こるんですよ」(ベテランサッカー記者)

 サッカーJ1の浦和レッズが、「横断幕事件」でJリーグ史上初の「無観客試合」という厳罰を科された。3月8日、ホームでのサガン鳥栖戦の試合前、浦和サポーターの3人が「JAPANESE ONLY」と書いた横断幕をスタジアム内に掲げたのだ。

 警備員は午後4時のキックオフ以前に気付いていたという。ようやく4時58分ごろ、ファンの指摘で警備責任者が警備会社の本部に連絡、警備責任者がサポーターに撤去を求めた。だが「試合中のため厳しい」と応じず。横断幕について、浦和の取り決めとして「掲示した当事者との合意のもとに撤去する」という手順があるため、クラブ本部は試合後の対応を指示するにとどまった。はたして、試合終了の6時ごろまで、2時間以上も差別的な横断幕が掲げられ続けたのだった。

「浦和の熱心なサポーターが変質していったきっかけに、アジア・チャンピオンズリーグ出場があると思います。他国で戦うチームを応援するとき、どうしても日の丸を意識しますからね」(前出のベテラン記者)

 とはいえ、差別行為が許されるはずもない。Jリーグの村井満チェアマンは記者会見で、「クラブとサポーターの体質の問題。改善してほしい。差別的行為を放置したこと自体が差別的行為に加担したと思われても仕方ない」と語ったが、サッカージャーナリストが、浦和の“体質”を解説する。

「1996年にフランス代表だったバジール・ボリが浦和に加入したとき、チームの人間から 『黒人の加入をどう思う?』と聞かれたんです。非常に違和感がありました。09年にパク・チュホという選手が浦和に移籍してくると噂になったときも、サポーターから強い反対がありました。浦和は平均3万人以上の観客動員力を誇りますが、それがサポーターを甘やかし、増長する環境をつくってしまった側面もある」

 それが昨年末、こんな形で顕在化したという。

「在日韓国人4世の李忠成の加入が決まると、あるサポーターがネットに『李はいらねぇ』と書いた。開幕戦でも李に対して心ないブーイングが飛んでいました。また、飲食店を経営する元サポーターが、浦和レッズのオフィシャル月刊誌で『浦和のウルトラ(サポーターのグループ)は韓国が嫌いだからね』と言ってるのを、そのまま載せてる。その店にチーム関係者が出入りしていて、なれ合いの関係になっているんです」

 良識あるサポーターの一人はこう語り、さらに「この機会にウミを出し切ってほしい」と訴えた。

 この言葉を、チームは真摯に受け止めるべきだ。

週刊朝日 2014年3月28日号