礼拝堂(バチカン)を模した天井高約16メートルの大空間に、「ラブりん」こと片岡愛之助の歌声が朗々と響き渡る――大塚国際美術館(徳島県鳴門市)で2月、「システィーナ歌舞伎」が上演された。ミケランジェロ「最後の審判」が見下ろす中、ファッションショーのランウエーさながらの花道で、役者が演じ、歌い、ダンスを踊る。大歌舞伎ではありえない和洋折衷の舞台に、3日間で計2800人の観客が酔いしれた。

 今回はオペラ「フィガロの結婚」を翻案した描き下ろし。愛之助演じる近習と恋仲になる侍女役には、愛之助と同じ上方歌舞伎出身の中村壱太郎(かずたろう)。今年1月の新春浅草歌舞伎「新口村(にのくちむら)」で梅川・忠兵衛を演じた2人が、息のあったコンビぶりを披露。ロミオとジュリエットをまねたバルコニーの場面もあった。ほかに上杉祥三、元宝塚の瀬戸内美八ら歌舞伎以外の男優・女優も出演した。衣装や所作、台詞回しは歌舞伎を踏襲しつつ、生演奏の音楽は囃子や長唄に弦楽四重奏も混じった。

 上演後の舞台挨拶で、「今回は歌に初挑戦しました。また来年もお会いしたい」と愛之助。歌舞伎上演を地元への文化貢献と位置づける同美術館は、来年も歌舞伎を主催予定という。

週刊朝日  2014年3月21日号