消費税の引き上げが迫っている。今回の増税でもっとも激しい衝撃を受ける商品は、価格も高く“一生の買い物”と言える住宅だろう。1994年9月、村山富市内閣で消費増税が内定すると、東京23区、首都圏ともにマンション価格は翌95年を底に上昇傾向に転じ、増税が実行された97年まで上がり続けた。ところが、増税後の需要の落ち込みに連動して、98、99年は価格が急落。なんと、値上がりが始まった95年以下の水準にまで落ち込んでしまった。不動産調査会社「東京カンテイ」の中山登志朗上席主任研究員が語る。

「駆け込み需要で市場が盛り上がった95〜97年は販売側も強気となり、価格は上がり続けた。ところが、実際はこの間に、その後の需要まで“先食い”してしまっていたため、98年以降は買い手が激減し、価格が下がったのです」

 言うなれば「駆け込みバブル」の崩壊。増税前に安く買うはずが、実は増税後よりも高い価格で買ってしまったという、笑えない事態が起きていたのである。

 経済ジャーナリストの荻原博子さんがこう警鐘を鳴らす。「不動産業者はどこも『増税前に早く買って』とあおるでしょうが、安易に乗るべきではない。需要が落ち込む増税後のほうが、値引き交渉の余地があります。住宅の値引きは100万円単位なので、増税分よりも下がることもあり得る。地価もローンの金利も当面は上がる気配はなく、もしすぐに家を買う必要がないなら、今は焦らずにローンの頭金をためておけばいい」。

 ちなみに、不動産を買う場合、消費税がかかるのは原則として建物だけ。土地にはかからない。

週刊朝日 2012年11月16日号