秘密保護法案が可決された衆院本会議 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 国民の「知る権利」を脅かす特定秘密保護法がとうとう公布され、1年以内に施行される。安倍政権は今後、秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関を乱立させ、批判をかわすつもりだ。これで天下り先が増え、焼け太りするのは霞が関だ。

 12月13日の公布とともに特定秘密保護法施行準備室ができた。諮問会議の委員選びや特定秘密の指定・解除などの統一基準案作り、秘密指定の妥当性をチェックする制度設計に当たる。室長は法案策定に携わった内閣情報調査室の能化(のうけ)正樹次長だ。

 ここから生まれる第三者機関は四つもある。

 年内には「特定秘密」の指定が妥当かどうかチェックする関係省庁の事務次官級の「保全監視委員会」(仮称)を設置。委員長には森雅子特定秘密保護法相当相が就く予定だ。

 年明けには、準備室で定めた運用統一基準の妥当性を話し合う有識者会議「情報保全諮問会議」(同)が発足。

 法案審議段階で内閣府に設置されることが決まった秘密指定の適否を検討する「情報保全監察室」、行政文書の廃棄の妥当性を判断する「独立公文書管理監」(いずれも仮称)も創設準備に取りかかるという。

 だが、「政府内に設置する身内の組織では独立性が高いとはとてもいえない」(野党議員)状況だ。

 対照的に霞が関の官僚はほくほく顔だ。縄張り、天下り利権が「重層的に」拡大したからだ。

 官僚利権の視点から一つひとつをみてみよう。

 まず一つ目は、独立公文書管理監である。公明党の山口那津男代表が「公文書管理法改正」を求めていることから、国立公文書館という内閣府の独立行政法人内に置かれるとみられる。

 国立公文書館は皇居の近くの北の丸公園に本館が、茨城県つくば市に分館がある。

 年間予算20億円で職員45人の過半数が内閣府からの出向、他に天下り19人が非常勤として籍を置く。独立公文書管理監が置かれれば、さらに増やせるだろう。内閣府は他の省が扱わない業務及び統計などを扱う寄り合い所帯の役所だ。

 だが、この特定秘密法案をつくってきたのは、内閣官房の内閣情報調査室だ。

 内閣官房は首相直属で各省から集められる官僚集団である。情報調査室には外務、防衛、警察官僚などが集められ、麻生内閣のときから民主党政権を経て4年かけて法案を練り上げてきた。

 そのため、当然のご褒美として保全監視委員会は内閣官房に設ける。ここでは、各省の次官らが集まり、互いの秘密の妥当性をチェックするという。だが、互いの秘密指定の妥当性を認め合う結果になるだけではないか。

週刊朝日 2013年12月27日号