12月7日から映画「愛しのフリーダ」が公開される。主人公はビートルズを世界一のバンドに導いた敏腕マネジャー、ブライアン・エプスタインをサポートした、ビートルズの秘書で、ファンクラブを運営した女性、フリーダ・ケリーだ。1961年に秘書になった彼女は、ビートルズが事実上の解散をした70年以降も働き、バンドの終焉を見守って72年に退職した。そんな彼女にライターの和田靜香氏が、ビートルズとの秘話を聞いた。

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――ビートルズの誰かがあなたを労ってくれたりしましたか?

ポールはよくお花をくれた。でもあるとき、オフィスの他の女性にあげようとしたのに彼女がいなかったから、「○○がいないから君にあげるよ」って言って、くれたの。正直に言わなくてもいいのに! でも、ありがたくもらったわ(笑)。

――プレゼントを持って来てくれたりも?

それはないわね。逆に「お金貸して」ってときの方が多かった。ちょっとタバコ銭がないと「貸して」って言うの。私は「この間も貸したじゃない? あれを返さなきゃダメよ」と言って貸さないときもあったわ。

――ビートルズの4人と働いて、一番良かったことは何ですか?

65年、オフィスがロンドンに移るときに私が、「ロンドンには行けない。父が反対してるから会社は辞める」と決めたとき、エピー(エプスタインの愛称)も4人も「何で辞めるんだ?」って言ったことね。あれが一番良かったこと。そんなふうに引きとめてくれるとは、思ってもいなかった。必要とされるのは嬉しい。エピーが私の父に会い、話し合ってくれたの。実はあのとき、すでに次の仕事を探して、「キャヴァーン」の支配人の秘書の仕事を決めていた。だけど「ごめんなさい。ビートルズのところに残ります」って、断ったのよ。

――リヴァプールの劇場の楽屋でジョンがあなたを理不尽に「クビにする」と怒鳴り、怒ったあなたに対し、その場でジョンがひざまずいて謝ったという話が映画の中で出てきます。それだけ絆が強かったのに、なぜ、72年に退職したのですか?

ビートルズが解散してファンクラブを閉めても、彼らが設立した会社、アップルはあったから働き続けることもできた。でも結婚して妊娠。家庭を大事にしたかった。ジョージに「君は最初と最後を見た」と言われたのよ。

週刊朝日 2013年12月6日号