
フランスで親しまれる「ジビエ」は、捕獲したシカなど野生鳥獣やその肉を指す。高たんぱく、低脂肪というヘルシーさが日本でも注目され、人気上昇中だ。その背景には全国で深刻化するシカの食害がある。
農林水産省によると、野生鳥獣による農作物被害額は2011年度で約226億円で、うちシカによるものが約83億円と最も多い。東京も例外ではない。都の最高峰、雲取山(2017メートル)をいただく奥多摩町は、ワサビを食べられる被害に悩み、年間を通じて有害駆除に取り組む。担い手は平均年齢60歳を超す地元猟友会だ。
町は捕獲したシカを「おいしく」活用しようと都内で唯一のシカ肉専門処理場を造り、“奥多摩ブランド”としての確立を目指す。農水省も販路拡大に努め、若手ハンターの増員を探っている。
ハンターの高齢化は進み、「我々が絶滅危惧種だ」と冗談めかして言う猟師もいる。豊かな自然を守り、後世に残していくため、自然との対話は続く。
※週刊朝日 2013年12月6日号