反日デモに人件費の高騰。かつて「世界の工場」として名を馳せた中国の魅力は、もはや薄れつつある。中国から逃げ出す企業が後を絶たないというのだ。
「背景にあるのは、労働者の賃金の高騰です。近年、中国人の給料は年率2ケタで急伸してきました。賃金の安い労働力を求めて進出してきた日系企業はいま、非常に苦しい状況にあるのです」(JETROアジア経済研究所の大西康雄・新領域研究センター長)
こうしたなか、9月に暴徒と化した反日デモが中国各地で発生。日系企業の店舗や工場の一部が過去にないほどめちゃくちゃに破壊された。日中関係は依然として厳しいままだ。
「撤退すべきかどうか、二の足を踏んでいた企業については今回の件で、『脱中国』に向けて背中を一気に押される可能性が出てきました」(上海で日系企業向けコンサルティングをするTNCソリューションズの呉明憲代表)
中国に進出している日系企業は、衣料や電子部品、食品加工など、安い賃金で大量の労働者を雇って生産する労働集約型が最も多い。中小企業が多数を占めているのも特徴だ。
信用調査会社・帝国データバンクの調査によると、中国に進出した企業のうち、年間売上高が10億円未満の中小企業が約4割を占める。そのうち、4社に1社が赤字に陥っているという。
※週刊朝日 2012年11月30日号