自衛隊が派遣されるエリアは、今回訪問する予定だった3カ国に近いオマーン湾、アラビア海北部、アデン湾だ。日本関係の船舶が襲撃された場合などには、武器使用が可能になる「海上警備行動」の発令が想定されている。

 ただ、イランを刺激する可能性があるため、同国に近いホルムズ海峡は事前に派遣先から外されている。にもかかわらず、安倍首相は中東歴訪をとりやめた。そのため「政府はイラン以外の地域も危険だと考えているのでは」との疑念が高まっている。前出の高野氏は言う。

「先月20日に来日したイランのロウハニ大統領に対し、安倍首相は自衛隊派遣について説明し、理解を得たつもりでいます。ロウハニ大統領にしてみれば『日本は米国に何も言えないよね』ということはわかっている。本来であれば中立的な立場を使って、米国とイランの両国に“話ができる国”として日本が事態の収拾に努力すべきですが、トランプ米大統領寄りの安倍首相に、中東の国々も期待していない。外交的成果が期待できないから歴訪も取りやめたのでしょう」

 安倍首相は2019年を振り返って「日本が世界の真ん中で輝いた年になったのではないか」と語っている。年が明けて7日の自民党の仕事始めのあいさつでも、「今年は戦後外交の総決算に挑戦し、新たな外交の地平を切り開いていきたい」と、不安定化する国際政治に積極的に関与していく意欲を示した。今こそ、「外交の安倍」の実力を世界に見せる時ではないか。(AERA dot.取材班)